Tuesday, November 9, 2010

〔トラフィック・モメント第二幕〕記述と構え 第三十二章 尖閣列島中国漁船衝突事故映像流出を巡る情報の在り方に就いて 

 今日神戸のインターネットカフェで例の映像が投稿されたことが発覚した。ニュースではそれ以上の情報を開示していなかったが、実際には警察はもっと先まで突き止めているのかも知れない。
 重要なことは常に我々に到達する情報は、それより前に幾多のプロセスを通して検閲されて伝えられているということだ。その点では中国漁船映像は極めて時節を得て公開された感があった。尤もそれは不法投稿によるものだったのだが。
 と言うことは菅政権が菅総理の衆議院予算委員会による発言の様に「もっと後の時代になったら適切な判断だったとされるだろう」という思惑が示す様に、要するに情報統制を政府がしようとしていた(それは千石官房長官による「犯罪者を英雄視することを私は承服しない」発言にも現れていた)ことを意味する。
 流出映像で示された一部始終を政府は一般公開することは憚られると判断したことだけは間違いない。ではそれ程まで一般公開すべきではない性質のものだったのだろうか?
 もし仮に「これくらいだったら、もっと早く一般公開していたってよかったのではないか」という意見が出されたなら、「にも関わらず隠そうとした」という考えが出されるし、逆に「やはりこれほどのことなら隠そうとしたって仕方なかったんじゃないか」という意見が出されたなら、一体誰が最初にこの映像をリークしたのかという、恐らく内部関係者に政府見解に対する謀反人がいたことになり、その意味では完全に政府統制が内部に於いて不徹底であるという批判も出されるが故に、二重の意味で菅政権は苦境に立たされることは必至である。
 又もし神戸の投稿者がそれ以前に誰かから映像の元となるものを渡されて、その最初に内部で裏切った者がもし突き止められれば、その者が英雄視される可能性は高い。世論とはそういうものである。つまり菅政権はこの様な展開になっていった段で実は既に敗北していたのだ。
 菅総理の言った様に、確かにあの時期に実際に一般公開していたのなら、日本国民の騒ぎは今この流出映像を見た時以上の騒ぎようだった可能性はある。しかしそれでもやはり実際に海上で何があったのかを一般国民に知らせるべきだったのではないだろうか?
 つまり重要なこととは、隠すということを決意したのなら、どんなことがあっても最後までそれを貫き通せなければいけないということなのである。結果的にはそれは出来なかった。つまり誰かが裏切ったからである。つまり誰か内部で裏切る者が出るという予想を政府が立てられなかったという事実一つでも一般国民へ情報を隠蔽しようとした思惑自体が既に誤りであったことが分かる。つまりこうなっていく事態を想定して、国民の恐らく一部であろうが、デモなどをして騒ぐことを承知で敢えて一般公開に踏み切っておれば、恐らく今の様な野党からの攻撃を得ることもなかっただろうし、機転の利いた判断であったと菅総理は流石と言われていたかも知れない。
 私自身は既に現代社会では政府ごときがどんなに画策しても尚この種の情報は必ず遠からずリークされていく運命にある、と考えている。文章などによる記録ではなく映像による記録であるなら尚更である。千石長官も言っていたが、文章では公式のものは丸秘ファイル化することは可能だが、この種の映像は撮影者から送られてきた原映像を編集する段で既に相当の数の人員が関わっていたということからも容易に外部に流出され得ることは予想された筈である。
 つまりリークされてはならない映像という発想を抱いたこと自体で既に菅総理は判断に誤りがあったと言うべきだろう。その判断を政府が通達した段階で既に反意を抱いた者は相当多数だったと想像される。「どうして?」という思いを抱いたのは千石長官クラスのトップにもいたのではないか?
 つまりその種の政府関係者筋内での不協和音の介在自体が既に多くの国民の間で政府に対する信頼を損ねている。これは一重に総理大臣の度量の問題ではなかっただろうか?
 歴史はある程度時間が経ってみなければ、一つの決断も正しかったのか否かを判断することは出来ない。そういう意味では今回の一件にしても、もう少し時間が経った後には「やはり菅総理があの時即座に一般公開しなかったことは正しかった」と判断される時期も来るかも知れない。
 しかしその時には必ず「しかしあの時政府見解に対して謀反を起こした者がいたればこそ、そう言えるのだ」と付け加わる可能性は高い。何故ならあの映像がずっと今もって封印され続けていたのなら、恐らく今後の中国との日本による外交の展開次第では、より深刻な政府筋の責任問題へと発展していった可能性も否定出来ないからである。
 要するに政府筋のトップに現代情報化社会に於ける基本的なインフラ、ツール、メディア全体への理解に乏しい者しか配備されていないという事実に方により重大な国民の側からの不安がある。尤もこれから情報管理的ノウハウを徹底的に踏襲した要員を政府が囲うことになったとしたなら、今よりももっと政府に対する疑心暗鬼が国民の間に蔓延していく(まさにソ連のKGBの様に)可能性もある。ある意味では政府情報統制とは緩やかなものであって丁度いいという国民の間での暗黙の合意が成立し得る可能性は皆の中にあるのではないか?
 例えばグーグル、ヤフークラスの情報ツールのプロが政府要因に参画していき、世界中の情報を一手に統制し、管理していく様な事態を想像してみよう。それこそ恐怖政府と言えないだろうか?そうなる一歩手前で今回の様な事態で踏みとどまっていたことを思えば、もし仮に最初にリークした犯人が発覚したとしても、政府な尚慎重に刑罰その他を考えないと、その時にはかなり現政権は危機的状況に陥る可能性は高い、とだけは今言える気がするのである。

 付記 今しがた(12:05現在)ニュースで海上保安庁職員が上司に自分が映像を流出させたと告白した旨が伝えられた。やはり内部の謀反者による犯行だった。今後の成り行きに眼は離せない。<国会の中継から、部下が上司に既に午前九時の段階で海上(巡視艇)で告白していたらしい。(14:40現在)四十三歳の神戸海上保安部保安官が名乗りを挙げ、自分自身でインターネットカフェで投稿したと言う。同僚達は戸惑いを隠せないと言う。制服組の連帯感も仄見えた。(17:04現在)>(Michael Kawaguchi)

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