Friday, March 18, 2011

〔トラフィック・モメント第二幕〕記述と構え 第五十七章 長い眼で見たら本はいずれ消滅する/ウェブサイトのリアルタイム性には敵わない

 今回の東日本大震災(東北地方及び太平洋沖大地震)によって我々に認識されたことは、一時的にせよ、かなり新聞紙が配送される物流コスト、或いは印刷にかかる光熱費、電気量等によって極めて非常時には不向きな(日本ほど大勢の購買者層を獲得しているビジネスとしては)メディアであること、そしてそのリアルタイム性における遅延ということから、私は長い眼で見た時明らかに紙による印刷メディアはやはり人類史上では消滅していくことは必定である、と思った。
 つまり今回の被災地に於いても活躍したのはウェブサイトを通した連絡であり、ツイッターやフェイスブック、或いはYouTubeなどによる映像配信であった筈だ。
 要するに現代のメッセージ送受信は、端的に無線技術からウェブサイトに至るまでそのリアルタイム性に於いてこそ価値があるのであり、例えば一冊の単行本を世に送り出すのに編集から製本、印刷に至るまで半年をかけなければならない出版物メディアは徐々に社会的存在理由から言えば盲腸の様に、かつての大日本国憲法下での国会で言えば貴族院議員、或いは今日の参議院議員と同じ様なものになっている、と言っても過言ではない。
 勿論教養を高めるレヴェルで、或いは研究者にとって必要な文献資料としての価値としては本というものは存続していこう。しかしそれは少なくともこれからの学者とか専門家、研究者にとってもやはり部分的なものに後退していかざるを得ないのではないだろうか?
 学問自体の専門性に就いては次章で考えるが、そもそも専門分野とか学問の専門性自体の存在理由も、広く社会全体の、或いは一般市民も参加することが可能である様なものとしての説明責任が広く全ての専門家に求められている現況では、本という形式での出版物メディアは、やはり図書館施設などの箱物的な過度の国費、地方公共団体の財源の出費から言っても、極めて不合理以外の何物でもない。要するに電子書籍が中心化していき、そのメッセージ配信もよりリアルタイム性を求められている現代では、書籍刊行物は、少なくとも紙による出版物である形態が極めて不合理なものとなってきているのである。
 そういう意味では前章で討論至上主義として批判した自由論議的な各市民に割り当てられた権利は、過剰なロジカルゲーム性から乖離させる意味では討論至上主義を批判すべきであっても、尚より一般の出来る限り大勢の人達の意見を自由に吸収することの可能なメディアはウェブサイト上でのものである事だけは間違いない。要するにこれからは全てのプロフェッショナルの権威主義的なレゾン・デ・トルを剥ぎ取って、より公平な全ての市民の能力や才能を引き出しやすい社会環境にしていくべきである。芥川賞や直木賞を中央権威とする文壇が存続していくこと自体は一つの文化の在り方としては悪いことではないが、そういった一部の作家達だけがオピニオンリーダーとして世相全体を担うとか、貴族階級として君臨するという様なプロフェッショナルとアマチュアの二元構造はもうじき全て崩壊する気が私にはするのである。
 しかしだからこそこれからはかなり熾烈な真の実力社会、つまり苛烈な競争社会が到来する気もするのだ。つまり権威者とその考え方の継承という従来型のプロフェッショナリティからは乖離した、より公平性と、リアルタイム性の強い、かなり有用性の高いメッセージ発信者の取捨選択だけが行われていくという予感がする。そのメディアとしてもツイッター、フェイスブック、YouTube、WikiLeaks、ニコニコ動画などがより有効なロールを演じていくという気がする。
 纏めると、近未来的には既に印刷メディアによる出版物がトータライズされたオピニオンリーディングロールから次第に遠ざかっていくということ、そしてそれ等をも部分としては残しつつも、全体的に牽引していくのは、やはりウェブサイトであり、それは大震災に於いて実質的な救援措置を図る為に活躍したのがこちらであったことからも明白であり、且つプロフェッショナルの存在理由が、文献学的な評論家ではなく(それは今回の震災でもワイドショー的なドキュメンタリー番組で現場の状況とは無縁の一般論を語っていた人々の果たしたロールの微々たることに比べ、実働部隊の人達<自衛隊、警察官、機動隊、その他海外からの支援部隊>の方がより、実際には現場では活躍してきたということでも明らかである。)、より実際社会活動に寄与するもの、つまり実用性、直接実用的ではないものでも、その存在理由に対する説明責任の明示が必要とされる、という時代に移行していくものと思われる。
 つまり権威主義的なプロフェッショナルな存在理由がより狭いものとして駆逐されていく運命にある、とは誰の目にも明らかではないだろうか?

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